ラファエル前派

ベアタ・ベアトリクス(Beata Beatrix)

ラファエル前派、なにかとお騒がせします・・。

さて、「ラファエル」にこだわっているといつまでも本題へいかれないので・・。「ラファエル前派」の話へ進めましょう。時代は19世紀の中頃・・。ヴィクトリア朝のイギリスで活動した美術家・批評家などのアートな方々からなるグループのことです。その結成は1848年ロイヤル・アカデミー付属美術学校の学生であったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの3人の画家によって結成されたんだそうです。

ロイヤル・アカデミー付属美術学校とは、1769年に開校した「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ Royal Academy of Arts(王立芸術院)」 です。著名な画家や建築家を中心とする80人の協会員が所属する芸術機関で、王立とはいえ、王室や政府から支援を受けていません。大きな収入源はその質の高い美術展の開催によるものです。ここの学生であった、3人の画家によって結成され、そのすぐ後にダンテ・ゲイブリエルの弟であり評論家のウィリアム・マイケル・ロセッティと、画家であるジェームズ・コリンソン、批評家の、フレデリック・ジョージ・スティーヴンス、彫刻家のトーマス・ウールナーが加わることになりました。これがラファエル前派のメンバーといわれる面子です。

ラファエル前派の絵画の特色としてあげられるものはいくつかありますが、中世の伝説や文学、さらに同時代の文学にも取材された主題が扱われている点が新しいとされているようですね。従来のキリスト教主題を扱うにしても、伝統的な図像を無視するような傾向が顕著で、画風は、初期ルネサンスや15世紀の北方美術を真似て、明暗の弱い明るい画面、鮮やかな色彩、細密描写が、主な特色ともとらえられます。

散々話に上がっていた「ラファエル」の名を含む「ラファエル前派」の原語はといえば「Pre-Raphaelite Brotherhood」。

「Brotherhood」ですから、本来は「ラファエロ以前兄弟団」と訳したほうがしっくり来るはずなんですけど・・。

19世紀のアカデミーにおける古典偏重の美術教育に異を唱える意味を持ち、中世や初期ルネサンスの芸術を範としたそうです。この「Brotherhood」とは、宗教的結社の意味合いも持ち合わせることになり、単に「趣味嗜好を同じにするお仲間集団」とは一線を画したい意図があったのかもしれません。しかしながら、内部ではそれこそ「人間模様、様々・・。」的な事件も勃発し・・。そこが芸術家らしいと言えばそれまでなのですが、ミレイは芸術性の違いから、ロセッティとハントはモデルをめぐる私情から、互いに散り散りとなっていくのですね・・。

宗教的結社の意味合いまで持ち合わせた、高い理想のBrotherhoodであったにも関わらず、女性問題?!ってど~~ゆ~~ことよ!!

その問題の中心になった女性モデル達・・。

アニー・ミラー(Annie Miller 1835-1925)さんもその一人♪

画家さんですからね・・。キレイなお姉さんを描きたいのはしかたないですよね・・。同じ結社(?)内なんですから、モデルさんも共通してきたりはするはずですよね。このアニー・ミラーさんは居酒屋の女中をしているときにハントに見初められ、レディとして教育しようと考えたそうです。そして、婚約をし、ハントが長期旅行へ出かける際に「モデルを勤めてもいい画家リスト」まで作って渡したにも関わらず、アニーが他の画家のモデルとなってしまったり、レストランや公園に出かけたりしたらしく、二人は不仲になったといわれています。ロセッティのモデルも勤めたことから、ハントとロセッティも不仲になっていったとか・・。痴情のもつれってやつですかね・・。芸術家さんらしいといえば「らしい・・。」のか??結局アニーはトーマス・トムソン大佐と結婚し、ラファエル前派とは距離を置く結果となったらしいです。しかしながら、結婚生活は幸せで、90歳まで長生きしたというから、めでたし♪めでたし♪ってところでしょうかね。

さらに、このラファエル前派の皆様と因縁深いモデルさんといえば、エリザベス・シダル (ウィリアム・ロセッティ[ガブリエル・ロセッティの弟]の奥さん)とジェーン・バーデン (ウィリアム・モリスの奥さん)などがいます・・・。(みんなアーティストの奥さんにおさまってる・・・)エリザベス・シダルが、ミレイの傑作、「オフィーリア」のモデルであり、ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」のモデルです。

ジェーン・バーデンは、これも有名なロセッティの代表作「プロセルピナ」のモデルさんです。

この二人の美女たち、実はビミョウな関係でつながっているのです・・。エリザベス・シダルのご主人ウィリアム・ロセッティは友人であるウィリアム・モリスの奥さんであるジェーン・バーデンのことを思い続けていたとか・・。そんなことも原因のひとつなのか、エリザベス・シダルは次第に健康を害していくことになるのです。そして最後にはアヘンチンキを大量に摂取し、32歳の若さで死んでしまったという、悲しい結末となってしまいました。美しい作品には壮絶で容赦ない現実が隠れていることも多くみられるものですね。