テート美術館はひとつではない??

ベアタ・ベアトリクス(Beata Beatrix)

「テート美術館」ではなく、「テート」?!!

『テート美術館の至宝「ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝時代の夢」』と題されたこの展示会ですが、ここで扱われている「テート美術館」とはひとつの美術館をさしているものではありません。

イギリス政府が持つ美術コレクションや近代美術コレクションを所蔵・管理する組織が「テート(Tate)」で、この組織がイギリス各地にある国立の美術館を運営しているのです。これまでテート・ギャラリー(Tate Gallery)と呼ばれてきましたが、2000年、バンクサイドにテート・モダンが開設され組織の改編がありそれ以降は単にテート(Tate)といわれるようになりました。

テートの構成は、次のようになっているそうです。

  • テート・ブリテン
  • テート・モダン
  • テート・リバプール
  • テート・セント・アイヴス
  • テート・オンライン

これら5つから構成されるテート(Tate)をひとつづつみていきました・・。

テート・ブリテン

テムズ川畔、ミルバンク地区にある国立美術館。ミルバンク監獄の跡地に1897年建設され、当初は「ナショナル・ギャラリー・オブ・ブリティッシュ・アート」で、ナショナル・ギャラリーのイギリス美術専門の分館だったそうです。次第に世界の近代・現代美術を扱うようになっていき、「テート・ギャラリー」という名で独立した美術館になったのが1955年です。

1500年代、テューダー朝以降現代に至るまでの、絵画を中心としたイギリス美術を時代順に展示しています。従来のミルバンク地区の建物を改修して使用されています。ラファエル前派などヴィクトリア朝時代の名品もさることながら、J.M.W.ターナー自身から寄贈された彼の初期から晩年までの充実した作品群の展示が、テート・ブリテンの最大の特色ともいわれているそうです。クロア・ギャラリーで、常設展示されています。そして、毎年テートが主催する「ターナー賞」展の会場となっているのがここになります。

ターナー賞

突如出てきたターナー賞というワード!19世紀イギリスのロマン主義の画家J.M.W.ターナーの名からつけられた賞で、50歳以下のイギリス人もしくはイギリス在住の美術家に対して毎年贈られる賞です。毎年春に、4人がノミネートされ、ノミネート者の作品が展示されるターナー賞展は毎年このテート・ブリテンで晩秋から冬にかけ開催されいるのです。そしてその会期中に受賞者の発表および授賞式典も行われ、イギリス国民にも注目される美術賞となっているようです。いい意味でも、悪い意味でも・・。実はこのターナー賞、論争の多い賞のようですね。ノミネート作品をきっかけにした話題や政治討論などが話題となり、美術がイギリス国民の中で身近なものとなる反面、美術家の芸能人化などから、美術のゴシップ化を招いたり、政治討論などに利用されることによっての美術の政治問題化につながることへの懸念も多く言われることとなりました。よくも悪くも「話題」にはなっているのですね。そんな「ターナー賞」の受賞者は・・・。

  • 1984年 - マルコム・モーリー (Malcolm Morley) 絵画 (油彩)
  • 1985年 - ハワード・ホジキン (Howard Hodgkin) 絵画 (油彩)
  • 1986年 - ギルバート&ジョージ (Gilbert and George) フォトモンタージュ
  • 1987年 - リチャード・ディーコン (Richard Deacon) 立体 (合板やビニールなどを構成したもの)
  • 1988年 - トニー・クラッグ (Tony Cragg) 立体 (ミクストメディア)
  • 1989年 - リチャード・ロング (Richard Long) ミクストメディア (泥と水)
  • 1990年 - スポンサーがなく中止
  • 1991年 - アニッシュ・カプーア (Anish Kapoor) 立体 (砂岩と顔料)
  • 1992年 - グレンヴィル・ダヴィー (Grenville Davey) 立体 (鉄)
  • 1993年 - レイチェル・ホワイトリード (Rachel Whiteread) インスタレーション (家にコンクリートを流し込み外側の家を解体したもの)
  • 1994年 - アントニー・ゴームリー (Antony Gormley) 立体 (鋳鉄による人型)
  • 1995年 - ダミアン・ハースト (Damien Hirst) 立体 (ホルマリン漬けにした牛と子牛)
  • 1996年 - ダグラス・ゴードン (Douglas Gordon) ビデオ・インスタレーション
  • 1997年 - ジリアン・ウェアリング (Gillian Wearing) ビデオ・インスタレーション
  • 1998年 - クリス・オフィリ (Chris Ofili) 絵画 (キャンバスに油彩、アクリル、フォトコラージュ、象の糞)
  • 1999年 - スティーヴ・マックイーン (Steve McQueen) ビデオ・インスタレーション
  • 2000年 - ヴォルフガング・ティルマンス (Wolfgang Tillmans) 写真によるインスタレーション
  • 2001年 - マーティン・クリード (Martin Creed) インスタレーション
  • 2002年 - キース・タイソン (Keith Tyson) ドローイングや立体によるインスタレーション
  • 2003年 - グレイソン・ペリー (Grayson Perry) 花瓶
  • 2004年 - ジェレミー・デラー (Jeremy Deller) ドキュメンタリー・ビデオ
  • 2005年 - サイモン・スターリング (Simon Starling) 立体
  • 2006年 - トマ・アブツ (Tomma Abts) 絵画
  • 2007年 - マーク・ ウォリンジャー (Mark Wallinger) インスタレーション
  • 2008年 - マーク・レッキー (Mark Leckey) 映像
  • 2009年 - リチャード・ライト (Richard Wright) 絵画(フレスコ画の技法を用いた抽象画)
  • 2010年 - スーザン・フィリップス (Susan Philipsz) サウンド・インスタレーション
  • 2011年 - マーティン・ボイス(Martin Boyce) 彫刻、インスタレーション
  • 2012年 - エリザベス・プライス(Elizabeth Price) ビデオ・インスタレーション